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光を求めて
第22章 光に向かって
「それでも会社内で話をするのは楽しかった。人の目を盗みながら普通に話せる会社が……私にとって一番幸せな時間だった」
父の言葉に涙が溢れてくる。
私の知らなかった真実。
私の為だけに隠された真実。
私を守るために傷ついた大人たち……
「私は、愛されていたんですね。お父様やお母様、それにゲンさんに」
「ああ、誰もがみなお前を愛していた。お前を第一に考えてきた。それでもお前には辛い思いばかりをさせてしまった……私が弱すぎたばかりに彩羽にはつらい人生を歩ませてしまった」
父の涙が私の掌に落ちてくる。
「彩羽……本当にすまなかった……謝って許される事ではないが…本当にすまなかった」
父は私の手を握りしめ、涙を落としながら謝ってくれた。
あんなにも許せないと頑なだった私の憎しみはいつの間にか薄れていた。
私が辛かったように父も辛かったと分かったから。
私に冷たかったのは楓ちゃんに対しての後ろめたさがあったから。
父の判断は間違っていたのかもしれない。
だけど、それだけを責められないのを私は理解している。
だって……もし、私たちが洋服を交換して出かけさえしなければ、楓ちゃんが誘拐されることも殺されることもなかったんだから……