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光を求めて
第5章 初恋

「彩羽……」

いきなり名前を呼ばれ、身体が震え硬直した。
その声は懐かしくもあり、聞きたくない声だった。

「彩羽?」

もう一度名前を呼ばれ、知らず知らずのうちに涙がひと筋流れ落ちていた。

「彩羽……帰るよ」

昔と変わらない優しい声音に振り向かなくても直ぐに分かってしまう。
もう何年も聞いていないはずなのに、私は忘れることなく覚えていた。

「誰?知り合い?」

今まで一緒にいた男は怪訝そうな顔をして私の顔を覗き込んできたけど、何も答えられない。
ただ俯いたままで彼の顔さえ見られなかった。

「悪いね。昔からの知り合いなんだ。久しぶりに会ったから連れて行くよ」

その彼が私の腕を取ると、今まで一緒にいた男が割って入ってくる。

「はぁ?何言ってんの?知り合いだか何だか知らないけど勝手に決めないでくれる?」

男は喧嘩腰で彼に詰め寄るけど相手にせず、男から私を引き離そうと私の腕を取り引き寄せる。
ヨロヨロとよろめきながら彼の腕の中に包まれると、久しぶりに彼の匂いを嗅いで息をするのを忘れたかのように過去に引きずられる。


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