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微睡みの中で
第7章 戸惑い
ある日の放課後。
校門に翔馬が立っていた。
こちらにはまだ気づいていないようだったが、ギクリとした私は歩みを止める。
どうしよう…。
そうこうしているうちに、向こうがこちらに気がついてしまった。
「莉奈ちゃん!」
ああ、捕まった。
翔馬や聡が、学校が終わってから速攻で帰るのを知っていた私は、あの日以来図書館で課題や読書をして時間を潰し、帰る時間を少し遅らせていた。
まさか待ち伏せされるなんて。
「し、翔馬くん…」
「いやー、やっと捕まった!もう帰ったのかと思ったけど…待ち伏せして正解だった」
「なんで待ち伏せなんか…寒かったでしょ」
「これあったから平気。莉奈ちゃんにも1個あげるよ」
スクールバッグを背負い、ポケットに手を突っ込んでいた。
いつもの様にニコニコと笑って、ポケットの中で持っていたものを私に差し出した。
既に熱を発したカイロだった。
手にじんわりと、温かさが広がった。