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微睡みの中で
第3章 翻弄
「こんな簡単についてきちゃうなんて」
それはあなたがそう言ったから…と言おうとして辞めた。
確かにちゃんと断ろうと思えば断れたはずだったのだ。
太陽はすっかり真上…から少しずれたところにあった。
「知らない人について行っちゃダメって教わらなかったの?」
「さ、沙耶香さんさっきから矛盾したことばっか言って…俺のこと馬鹿にしてます?」
冗談めいた顔で俺を翻弄する沙耶香に対抗心が湧き、憎まれ口を叩いてみる。
沙耶香はクスクスと笑ってごめんねと謝り、また進み始めた。
「おいで、こっち」
入ったところは小さなカフェ。
沙耶香の知り合いがやっているらしい。
「私アイスティーで…。聡くんは?」
「じゃあコーヒーを」
失礼します、と店員が下がった時、沙耶香が頬杖をついて俺の顔を眺めていた。
「へえ。コーヒー飲めるんだ?大人っぽいね」
「え?はい。母がコーヒー好きで。飲むように」
「私コーヒーは苦手なの。だって苦いじゃない?飲むにしても牛乳をいっぱい入れないと」
妙に大人びた顔と振る舞いなのに、コーヒーが苦くて得意ではないという可愛い一面を垣間見せられる。
ギャップ萌えと言う奴なのか、これが。