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微睡みの中で
第5章 新学期


「…っ…そういうことするならちゃんと上手くやれよ」


「自分でも分かってんだよ…あのままだといけないと思ったから、切った…」


「…まあ手遅れ感はあるけど…そのままよりは懸命な判断か。反省してんなら今後気をつけろ」


その時、ブー、ブー、と俺のスマホが震えた。
画面には沙耶香の名前が表示されていた。


「…沙耶香さんとも長くやっていきたいなら尚更だぞ。もう遅いかもしれねえけど」


「……っ」


「…っ俺が…どんな気持ちでお前らのこと見てたと思ってんだよ」


「…え」


顔をあげた翔馬は切なそうで、いつもと全然違う顔つきだった。


──俺がどんな気持ちで、って。


どういうことだよ。


「え、お前…莉奈のこと…」


「好きだよ。…中2の時から」


「いや…え…待てよ。でもお前、あのお姉さんと仲よさげで…」


「あの人とは海でも祭でも手を出してない。ただの友達だ…相談にも、乗ってもらってたし…」


「…っ、でもお前、莉奈の事好きって…、なんでそんな大事な事言わねえんだよ」


「言えるかよ!」


翔馬はドン、と壁に拳をぶつけた。
わなわなと唇を震わせ、珍しく荒々しい声をあげる翔馬に唖然としてしまう。


「…あ…ごめん、取り乱して…あの時からずっと、あの子の眼中にはお前しか映ってなかったんだよ。お前、顔もいいし、俺より勉強も出来て…。俺が敵うわけねえよ…」


髪で顔を隠すように、悔しそうに俯き、ぽつり、ぽつりと話し出す。
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