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微睡みの中で
第6章 気持ち


「さ、沙耶香さんのことは人として好きだよ…だけど俺沙耶香さんに釣り合ってないし…正直喋るのも…その、部屋に上がらせてもらったりするのも恐れ多いっていうか…」


「ふうん、好きならいいじゃない。私は芸能人でも偉い人でもない。ただのそこら辺にいる女よ。恐縮する必要なんてどこにもないんだけど?私はあなたと対等でいたいのだけれど」


「それは…そうだけどっ…そういう好きとは…ちょっと、まだ…」


「ごめんなさい。意地悪しちゃったわね。恋愛感情がよくわからない者同士でくっつくとどうなるのか少し興味があったの。でも私は本気よ」


また彼女のペースに流されかけている。

ぐっと声が喉に詰まっている俺の様子を見かねた沙耶香が、口を開く。


「本当に不思議…好きじゃないとか嫌いとか、そういうネガティブなことは単純で目障りなくらいわかりやすいのに…なんで好きって感情はこんなに複雑なのかしら…人が勝手に細分化してるのよ。きっと」


長い髪の毛先をいじりながら少し愚痴を言うように自問自答をしたあと、長い髪をかきあげて、ふう…とため息をつく。


憂いた表情をすると頬杖をつき外の風景に視線を移す。


「なんでもそうよね。ポジティブなことには気付けなかったり、当たり前だって思っていたり、目を背けたりする。気持ちが変わるのに臆病になってるのかしら…この歳になってもわからないなんて、変ね」
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