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微睡みの中で
第6章 気持ち
俺もきっかけはきっと違えど、状況は同じ。
感情の複雑さに阻まれている。
どうしても心にブレーキがかかってしまうから。
俺も視線を外に移してみる。
沙耶香の見つめる先で、道行く人々が忙しなく歩いていた。
休日なのもあってカップルもかなり多い。
視線を沙耶香に戻す時には既に、向こうはこちらを見つめていた。
「今まで私もさんざん遊んできたけど、その中で出会った1人に、パートナーとして一緒に居てというだけじゃいけないのかしら。特別な関係にはなりたいけど、良い恋人が欲しいのとはまたちょっと違うニュアンスなのよ…。それでも好きだという気持ちをお互いに一致させないと…一緒にいてはいけないの?私は人と付き合っていくことで生活に大きな変化なんて、求めてないのよ」
「パートナー…」
その言葉がとても腑に落ちた。
『彼氏』、『彼女』という表現。
『恋人』という表現。
俺はきっとそれらに囚われすぎていたんだ。
恋人として沙耶香の隣に居ようと思うと、大前提として相手に恋愛感情持っていないといけなくて、いい恋人で居なくてはと周りに気を張ってしまう。
俺にそれは難しく、沙耶香にとってもきっとそれは重荷だろう。
沙耶香の言う『対等』でいるためには、俺自身も沙耶香も素で居ないと意味が無い。
しかし、パートナーとして考えてみると、その前提がなくても俺でも沙耶香の隣に居てもいいような意味を感じる。