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微睡みの中で
第6章 気持ち
ガチャリという音でハッと目を覚ます。
シャワーから上がった沙耶香が部屋に戻ってきたようだった。
「…起こしちゃったわね」
「いやっ、その…なんかリラックスしちゃった」
髪はもう既に乾いていて、部屋着に着替えてあった。
そっと俺の横に腰掛けると、精油の瓶を手に取った。
「前にあの友人達と旅行に行った時買ってみたの。全然詳しくはないんだけど、その当時色々あってあまり眠れなくてね…よく眠れるみたいだからラベンダーの香りを買ってみたんだけど、結局使ってなかったのよ」
「効果抜群だね、それとも俺が単純なだけ?」
可笑しそうに笑うと、直後に切なげな表情を浮かべ、カフェで見た時と同じ、憂いた目をしながら瓶に視線を移した。
それは俺を翻弄しているいつもの沙耶香ではなかった。
「私ってね、外ではカッコつけて、虚勢張ってるの。なめられたくなくて。まだそのクセがあるけど…聡くんだけの前ではそれ…したくないの。…いい…?」
緊張している様子の沙耶香。
ちら、とこちらの反応を伺っている。
きっと勇気を出して言ったに違いない。
俺も、勇気を出さねばと、沙耶香をそっと抱き寄せた。
「俺の前でくらい素でいてよ」
それだけ言うと、すこし肩を震わせていた。
沙耶香が俺を抱き締め返すとき、まだ心に感情が追いついていないのをひた隠すように、ゆっくりと唇を重ねる。
唇を離した時、 俺をギュウ、と更に強く抱き締めた。