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微睡みの中で
第6章 気持ち
そして沙耶香が洗い物を終えた頃。
ブー、ブー…
不意に俺のケータイが震えた。
母からだ。
土曜日も仕事に出ている母も、今日は日曜日だから休み。
しかし俺が家に居ないので連絡してきたのだ。
沙耶香は俺の横でじっと座っていた。
「もしもし」
『聡?あんた何処に居るの!』
「えっ、と…友達ん家に…」
『またか…まったく、連絡の一つも寄こさないで…この間連絡しなさいってあれほど…』
「ごめん、気を付ける…」
『まあいいわ。あんたも早く大人になって出ていってくれたら楽なんだけど』
「ご、ごめんって…!」
電話を切られ、フゥ、とため息を溜め息をつくと、沙耶香が口元を押さえてクスクスと笑っていた。
「な、何?」
「ふふっ、また怒られてる。いやぁ、いいわね、なんか」
「また、って…そんなにいい気分じゃないよ…俺が悪いけど」
「あははっ、私も悪いわね。私、親が居ないから。ちょっと羨ましいな」
もう昔の事だから…とさほど辛そうな表情はしなかったが、沙耶香が苦労人だということを知った。
でも、何故「今の沙耶香」が在るのか少しだけわかった気がした。