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密室脱出 ~あなたは脱出できますか?~
第3章 Q 03 「ノートの値段」
「何やってんのぉ? 私には見えないよぉー」
文句を言いながらも、梨沙は動かないでいる。
「じゃあ梨沙、手を反対にして、真後ろを向いてごらん」
「んっ。話は聞こえてたけど……。ホントだぁ! その棚じゃない? 何にしても、北を差してるってことだよね?」
奏汰が押そうとして棚にかけた手を止めた。
「何か軽そうだけど、動かない」
箱カバー付きだと思っていた本を拓也が取り出そうとする。
「取れない。これ、全部貼り付いているよ」
棚は箱カバー付きの本でいっぱいだが、全て空らしい。棚は軽くて、拓也が反対から押すと、奏汰の方に倒れる。
「うわあっ」
奏汰が支えると、棚の足元は一辺が大きな蝶つがいで床に留められているだけ。その下の床には、人が通れる穴があり階段が見えた。
「ここから出入りしていたのか……」
「ねぇ、地下だよぉ……」
梨沙が中を覘いて不安そうに言う。
確かに地下だが、階段が下まで見えるくらいに中は明るい。
「行こうぜっ」
奏汰が荷物を背負って、階段を降りる。みんな後に続いて地下へと降りた。
先は通路で、床や壁はきちんと整備してあるが、地下のため勿論窓は無い。だが天井にはライトがあり、歩くのに不自由は感じなかった。
「……美織? どうしたの?」
梨沙の言葉に、美織は首を振る。
「何だ? ここは?」
少し歩いて、奏汰が足を止めた。
正面は鉄格子の先にドア。左側にも鉄製のドアがあるりその一角だけは薄暗く、壁や天井は石で床は土のまま。壁からは鎖が下がっていて、教科書で見た中世の拷問器具。天上の角にはクモの巣があり、まるでここだけが廃墟のようだった。
他に道は無く、四人はゆっくりと足を踏み入れ、拓也が中央にある封筒を拾い上げる。
今度は、Tと書かれたシール。
拓也が躊躇無く封筒から手紙を出すと、三人も覗き込んだ。
Trial 誰が残る?
「仲間同士の信頼関係を見せろ。
そうしなければ、4人での脱出は無理だ。
1人をこの部屋の鎖に拘束するとドアが開く。仲間に必要な物と鍵を見つけて戻れ」
文章を読んだ4人は黙り込んでしまった。
普段ならすぐに驚きの声を上げる梨沙も、何か考えている。
「あれに、一人を繋げっていうのか?」
奏汰が壁の鎖に近付く。