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密室脱出 ~あなたは脱出できますか?~
第3章 Q 03 「ノートの値段」
中世のものとは違い、鎖は大分低い位置に付いている。両手首に巻く革製の輪の内側には、四ヶ所の金属。足首用の鎖も同じだが大分長く、脚を延ばして座っていられるくらいあった。
「みんな。それぞれの金属の部分を。指で押さえてみてくれないか?」
四人が拓也の言った通りにしてみると、先のドアからガチャと鍵の開く音。
「開いたぞっ」
喜んだ奏汰がドアへ進もうと手を離した途端、またガチャと音がして、鍵が掛かってしまった。
「クッソー」
奏汰はノブを回しているが、しっかりと鍵が掛かっている。
「奏汰、無理だ。誰かがここに残って、縛られていないと……」
「オレが残るから、縛ってくれよ」
奏汰が鎖の間に座る。
「オレ、推理苦手だから。あの部屋の中に、どうせまた問題があるんだろ?」
「だったら私が残るよ。力が必要な時、奏汰がいなかったら困るじゃないっ」
梨沙が奏汰の腕を引く。
「私が、残る……」
美織が弱々しい声で言う。
「みおを、こんなとこに残せるわけないだろ? 推理も出来るし」
「そうだよぉ。一番役に立たない、私が残るからっ」
梨沙に手を持たれた美織がしゃがみ込んだ。
「美織? どうしたの?」
「みお!」
「もう、限界、だから……。三人で、行って……」
美織が左胸を押さえている。
「発作か?」
奏汰が美織に近付くと、美織が小さく頷く。
普通に生活していれば、中学生くらいから発作を起こすことは無かった。薬が無い不安と今までに無い緊張感に襲われ、気持ちが弱った美織の体は精神的に限界。
「仕方ないな。美織には、ここで休んでいてもらおう」
そう言った拓也を、奏汰と梨沙が睨みつける。
「みおを見捨てる気かよっ!」
「拓也っ、酷すぎないっ?」
「もう一度、読んでみてくれないか」
拓也が手紙を差し出す。
「仲間に必要な物と鍵。と書いてあるだろう? 必要な物は、薬かもしれない。今他に、仲間に必要な物はあるか?」
その言葉に、二人は黙ってしまった。
二人が立ち上がって手紙を読み返している間に、美織は鎖の間に座り、息を切らしながらも革製の輪を足に着けている。
「みお……」
「もし、先に進めるなら、行って、いいから……」