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密室脱出 ~あなたは脱出できますか?~
第8章 Q 08「狼狽える時間はない」
「ん……。でも、拓也は本当に頑張ってるよ。それに、ここはやるしかないじゃん。拓也と、一応私の力だけで。頑張ってみよう!」
梨沙に力づけられるなど、今まで拓也は想像もしていなかった。自惚れ。そんな言葉が浮かぶ。
「ねぇ、拓也。コレ、ココにピッタリだよ……」
梨沙は発泡スチロールを半分程横穴へ差し込んでいる。
拓也は意を決して穴へ飛び込んだ。これでゲームオーバーなら、何かあるだろう。制限時間が十二時間なら、餓死する事はない。拓也はマットの上で様子を窺ったが、何も起こらない。
「ヒントを与えられたのは、梨沙だ。Qには、道を開くのは君だ、とあったから。普通なら、君達、と書くのに」
「え……」
「ここに落ちた、君、を差しているはずだ。でも、どちらが落ちるか分からなかった……」
その言葉にゆっくりと頷き、梨沙が発泡スチロールを穴に差し込んでいく。
「あっ。何か、手ごたえがあるよ? でも、サイコロの数字。関係あるのかなぁ」
「梨沙! ちょっと待つんだ!」
拓也はもう一度手紙読み直す。
「今まで君が出会ったQを見つめろ……。これは……。梨沙が見たQの数……?」
「えっと……。六問! 今まで六問! じゃあ、六の面を見ながら、差し込めばいいの?」
「やってみよう……」
梨沙は一度引き抜いたサイコロを回し、六の面を見つめながら横穴へ差し込み直した。
力を込めると鎖の外れる音がして、壁がドアの形に向こうへ倒れる。
「キャー!」
「開いた!」
程なくして、一部を無くした落とし穴が妙な音を立て始めた。
「梨沙! 早くっ!」
拓也に押されるようにして二人が出ると、落とし穴が崩れ始めている。一人が上にいても、飛び降りて出口を抜ける余裕くらいはあっただろう。
急いでも、四人は無理だ。だから二手に別れさせたのだろう。
拓也は考えていた。
二人が見ているうちに、落とし穴は完全に埋まってしまった。
これも一種の自動ロック。もう前には戻れない。
「鎖で押さえていたのか……」
倒れたドア状の土に下には、その横の壁からの鎖。つなぎ目は下敷きになって見えないが、女子の力で外れるくらいに造ってあったのだろう。拓也はそう考えてから、後ろのドアに進んだ。