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密室脱出 ~あなたは脱出できますか?~
第13章 Q 13「最後のQ」
「だから……。分からない……。きっと、違うよ……」
「昭和16年は1941年。平成20年は2008年。これは合ってる。奏汰。年号が変わった年と月を記憶してないか? 歴史、得意だろう?」
拓也の言葉と同時に三人に見つめられ、奏汰は記憶を呼び起こそうと目を瞑った。
「確かに大正は15年で……。12月中に終わってる。明治は……。明治は、45年あった。でも、終わったのは……。夏だ」
「明治45年が大正元年で、大正15年と昭和元年が同じか。計算してみるよ」
拓也が、すぐメモ張に向かう。
「奏汰、凄いねぇ!」
梨沙が奏汰の肩を叩く。
美織は俯いたまま、祈るような思いだった。
「出来た。全部合っているよ。美織、ありがとう」
顔を上げた美織が、拓也と視線を交わす。
「ってことは、正解は8か。行こうぜ!」
美織は奏汰に腕を引かれ、四人は8のドアの前に立った。
「開けるぞ……」
三人の頷きを見てから奏汰がノブを回す。他のドアからは、カシャカシャとロックされる音が聞えてくる。
「外だ!」
「出られたぁー!」
はしゃぐ奏汰と梨沙の後ろでは、ホッとした表情の拓也と美織。
「ここはどこなんだよお。あっ!」
「キャー!」
連れて来られた時と同じ。スーツ姿の男達に四人は眠らされ、傍にあったトラックの荷台に入れられた。
「ん……」
目を覚ました拓也は、周りを見る。
「夢? じゃない……」
寝ているのは二階の自分の部屋のベッドだが、ベッドの横にあったのは、名前の書かれたあの袋と最初に無くなった学生鞄。
拓也は急いで袋の中を見る。
「使った物以外、全部、入っている……」
急いで一階へ降りると、キッチンで母親が何か調理をしていた。
「あら、起きたの? 随分よく眠ってたわね。運ばれても起きないなんて」
母親が手を止めて笑っている。
「運ばれた?」
「覚えていないの? 昨日の合宿で眠っていたあなたを、事務の方が部屋まで運んでくれたのよ」
「合宿?」
そんなものに覚えは無かった。昨日あったのは、数時間の集まりだけ。それも四人しか来なくて、一時間程で生徒会室を出た。