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魚の骨
第2章 透明

一度行った土地を、何十年も前の出来事をずっと鮮明に覚えてる秀才な彼は、きっと私との行きつけの店も歩いた道も記憶の中では小さな小さなビーズで出来ていて、そのビーズはネックレスになることはないんだろうな。
本当は2人で色んなところに行った方がいいんだろうか。
色んなところを思い出の場所にして、色んなことを思い出しながら、あそこはどうだったこうだったと話し合う方が楽しいのだろうか。
同じ小説を何度も読むように、同じスープを何度も注ぎ足すように、同じ映画を見て何度も泣きたかった。
泣きたい時に見る映画が決まってるように、愛し合いたい日は決まっていた。
来月も再来月も来年も10年後も、ここで彼を思い出して優しい気持ちになりたい。隣に彼がいなくなっても、この街を彼の街にしたかった。盲目的にマーキングを重ねてる私を見て飼い主の彼はどう思っていたのだろう。
ここが好きなんだなと思ってくれてたらいいな。
来月の散歩もここがいい。

