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魚の骨
第3章 誘惑
狼が猫を食らいつくようなセックスは突然終わった。
顔を見ることができず、私は彼が横たわってる方とは逆の方向に向いた。横で暑そうな息切れが聞こえてくる。
さっきまでの獣の空気から一変して部屋は熱だけがこもっていた。

なんで黙ってるのだろう。
後悔してるのかもしれない。私とのセックスをするんじゃなかったと思ってるのかもしれない。

でも聞けない。するんじゃなかったと言われたら、もう起き上がれない。ぐらぐらのジェンガのように、彼に滅多刺しにされて私の心はもう穴だらけだった。

「何考えてるの?」
「そっちは?」

子供の頃、「こっちが聞いてるんだから」とピシャリと払いのけられたことがある。また、言い訳を言おうとすると、「だってじゃない!」とも怒られてた。
今思えば、あの担任の女教師も恋い焦がれた男に対しての思いを子供に当たり散らしてただけなのかもしれない。

大人になると、質問返しもだっても使う。
それで怒られたことは一度もない。むしろそっちの女の方がモテると水商売では教わった。
だってだってとモジモジしてる女、質問返しをして話を聞こうとする女が男たちは好きだ。
あの担任の女教師は薄化粧で色気もなく自分をプロデュース出来ないから、モテなかったんだろうな。


「相性いいよね?」と思ったことを伝えた。
静まり返った部屋が突然彼の笑い声で揺れた。
よかった、笑ってくれて。笑うと共感を得やすくなる。
彼がもし私とのセックスを後悔してる気持ちがあっても、笑うことによって相性が良かったからいいかと前向きな気持ちになってくれる。


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