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魚の骨
第5章 卍
時計の音だけがカチコチカチコチ頭で響いていて気が狂いそうになった。胸の奥の扉から私が恐る恐る覗き見をして、まだ部屋から出れそうにないと様子を伺っている。

「親戚にお見合いを勧められている。」

もし時計の針を巻き戻せるなら、その言葉は聞きたくなかった。彼にとっては笑い話なのかもしれないが、私にとっては平成最後の気が気じゃない事件であって、積み重なってきたものが崩れ落ちる絶望的な気持ちになった。

「嫌だ!嫌だ!行かないで!嫌だ!」と画面の向こうで喚き散らすと「頑張って阻止してるから」と文字が浮かんできた。

頑張って…?
頑張らなきゃ阻止できないの?
頑張ってってなにを頑張っているの?
少しでも気持ちが揺らいでるとかそう言う意味?
少しの気持ちを抑えようとしてるってこと?
はっきりいって欲しい。本気で行きたくない。勘弁して欲しいって私に愚痴って欲しい。行きたくない。俺には優子がいるんだから全然他の女には目もくれないとはっきり私に言って欲しい。


黒い渦が全身をじわじわと占領していき、汚い水が体を流れているのが実感する。
気持ち悪い。お見合いなんて気持ち悪い。
仲良く他の女とお茶を飲んで未来について語る姿なんて想像すると吐き気がする。


画面が汚水で濁って見えてるなか、「仕事に行ってくる」と言う文字が滲んでいた。

私のまくし立ててる声はこの小さなオモチャの中に閉じ込められてしまった。


汚水がどろどろと流れてるなか、独りぼっちでベッドにしがみ付いて顔を上げて息をした。
汚い、気持ち悪い、きつい、3Kの仕事と言われるものは何だっけなと考えながら、動きにくい足を動かして部屋から出る準備をした。独りでいると独りなのを実感してしまう。


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