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魚の骨
第5章 卍
誰かを好きになると、その人と話したくなって目を合わせたくなって、過去も未来も今も想像して、たくさんの情報を一言一句手に入れて、それでも知りたくなり手をつなぐ。
手をつないで抱きしめて髪に触れて、身体中を触れたくなり、見返りを求めて自分の身体を相手に渡す。
知りたい気持ちも受け入れる気持ちも、会いたい気持ちも抱かれたい気持ちも、同じように見返りを求め出し同じタイミングで同じことを考えて欲しい病を患い始める。


そうなったら終わりだ。

終わり。おしまい。バッドエンド。


住まないほうがいい。毎日会わないほうがいい。
連絡も今くらいがいいんだ。生きてるのか生きてないのか分からないくらいがいい。

彼がいなくても生きていけるじゃない。
去年の今頃、知らない人だったじゃない。知ってしまったから恋に落ちて、知らなかったらただの流れるままの日常。

「少々お待ちください」

見習い美容師がドライヤーを置いて、ただのイケメン美容師を呼びに行った。ただのイケメン。仮面を外したら誰しも骨だけ。

ボーンさん。仮面を外してもボーンさんではない。
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