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堕落の絵画 調教の目覚め
第2章 思いもよらぬ再会
「あ、綾野さん来た!」

サワコが声を上げた方を見ると、ダークグレーのジャケットを羽織り、仕事用にしては洒落たカバンを手にこちらへ歩いて来る男性がいた。
摩耶子の3つ上の先輩、綾野令司だった。

「ごめんごめん、仕事が長引いて」
綾野は、空いていた摩耶子の前の席に腰を下ろした。

サイドに流した黒髪がきれいに整っている。目の前の男性はどこから見てもスタイリッシュなビジネスマンだ。
学生時代のパーマをかけた金髪姿の面影は、完全に消えていた。

「綾野く~ん遅いじゃ~ん!」
酔いが回った別の先輩がドリンクメニューを綾野に渡すと、すぐに話の輪へ戻っていった。

向かい合う摩耶子と綾野の間に沈黙が流れる。
どうしよう、何か話さないと。
気まずさに焦る摩耶子に、綾野が話しかけた。

「摩耶子ちゃん、何年ぶりかな」
「先輩が卒業して以来だから……6年ぶりですか?」
「そんなに経つのか。本当に久しぶりだなぁ。あ、料理ってもう頼んだ?」
「私もさっき来たのでよくわからないんですけど、コースの料理はこれで全部みたいです」
「じゃあ、あんまり食べてないよね。好きなもの頼もうよ。何がいい?」
「でも、皆はもう食べないだろうし……」
「いいよ、気にしなくて。俺たちだけで食べよう。何がいい?」

微笑みながら、綾野は落ち着いた口調で話す。
ストライプ柄のシャツの袖から、文字盤に星空をデザインした特徴的な腕時計が覗いている。
服装や髪型の雰囲気は変わっても、どこか個性的なアイテムを持っている所は当時のままだった。
いかにも美術学生らしい派手なパーカーやジーンズも似合っていたが、目の前の男性はシックな服装を完璧に着こなしていた。

口数は多くないが、にこやかな表情で場を和ませる。
子どもっぽい学生だった綾野は、配慮ある大人の男性になっていた。
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