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お良の性春
第1章    好色歌留多 裸地獄
 「さて次は、お良さん」と名が告げられた。

 とうとうまた、お良の札が引かれたのだ。今度の相手は、喜一。お良は一瞬ホッとしていた。喜一も龍之介と同じ豪傑肌。腕っ節は強いが、カルタは苦手。
 だが、油断は大敵だ。先ほどのようなことがある。万が一にも、万が一にも・・・。

 お良は背水の陣を敷くような思いで読み札を待った。

「きみがため」

 お良は動かない。次の音を待っていた。次の一字が決り文字。
 「を」か「は」か。
 その瞬間、喜一の手が「わがころもで」の札をバシッと押さえた。明らかにフライングである。
 だが、無常にも読み手は、「はるののにいでて」と読んだのだ。お良の頭は真っ白になっていた。
 二者択一。喜一はバクチに勝った。
 ここで、カルタをご存じない方のために、この勝負を解説すると、「きみがため」で始まる句は二首ある。

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