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お良の性春
第1章    好色歌留多 裸地獄
 なんとまたお良ではないか。

 しかも、お良が引いた相手の札は源一郎。

 お良をこの絶望的苦境に陥れた元凶は、思いを寄せる源一郎である。二重三重の絶望感がお良を襲う。

 お良のこころは尋常ではなかった。お良に冷静さを求めるのは、「木に縁りて魚を求む」ようなものである。
 しかし、お良は必死だ。

 ここで負けたら、もう後がない。腰巻一枚になる。

 何があっても負けるわけにはいかない。

 札をしっかり見ようと迫り出せば、胸元が開いて、前に座る源一郎の視線が気になる。

 かといって、そんなことを気にしていたら、カルタを取られてしまう。

 お良は左手で気になって仕方がない己の胸元を押さえた。その分、右手の自由が損なわれるのは致し方ない。

 だが、勝負はお良にとって非情だった。
 なんと読まれた取り札は、お良の左手前方に置かれていた。
 野球で言えば逆ハンドでボールをとるようなもの。
 胸元を押さえた手が、いかにも邪魔だった。

 お良は、またも負けた。

 「ご勘弁ください」

 絞りだすようなお良の声は震えて悲痛である。
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