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お良の性春
第1章    好色歌留多 裸地獄
 源一郎は迷った。
 「ここまで」そう己が一言発すれば、事はそこで終わる。
 だが、しかし、しかしだ。源一郎は抑えきれない欲望に飲み込まれていた。見たい。見たいのだ。
 美しいお良の、あの肌襦袢の下の素肌を。雪のように透き通る肌を、そして胸の膨らみを・・・・。

 「約束は約束」

 言い放った源一郎の乾いた声がお良の心の臓を貫く。

 「すでに清三郎殿も褌一枚。ここでそなただけ勘弁したのでは、清三郎殿に失礼であろう」

 たたみ掛けるような源一郎の言葉がお良を圧倒する。
 (無体なことを)源一郎の言葉を聞いた一之進はそう言いかけて止めた。一之進も源一郎同様、己の好色な下心に抗うことは出来ない。

 若者たちのこの助平根性を非難するのはたやすい。
 しかし、聖人君子と言えども、男にとって、女性の裸体への憧れは、なかなかコントロールが難しい。昔々、久米の仙人は真っ白な女人の太腿に惑い、雲の上から落っこちた。
 女性というものをまだ知らぬ若者が、その衣に隠された女体に思わず知らず心引かれたとしても、誰が咎めだて出来ようか。

 そんなわけで、一之進の口を衝いてでた言葉は・・・。

 「武士に二言はない」

 言ったあと、一之進は己の助平さを情けないと思ったが、まさに「武士に二言はない」のであった。

 最後に「ゴクン」と龍之介の生唾を飲み込む音が静まり返った広間に響く。

 お良に逃げ出す道はなかった。

 拒否するならはじめから拒否すればよかったのだ。どうせ負けはしまい、そう自惚れた己の過ちに、天が下した罰か。

 お良は震える手で腰紐を解き、肌襦袢を脱いだ。
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