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お良の性春
第2章    春風乱舞 恋のつむじ風
 「父上、お良殿の気持を確かめました」

 源一郎は屋敷に飛んで帰ると父に報告した。

 伊兵衛との縁談がことのほか嬉しかった仙太郎の動きは素早かった。

 四方に手を回し、八方に気を配る。

 折も折、囲碁好きの殿より誘いの声がかかる。
 二人は碁盤を前に座わっていた。
 まずは腰元が差し出した茶をすすりながらの世間話。

 「ところで、薬草の方はどうじゃ」

 「いたって順調にて、注文に追いつけない盛況にござります」

 「有り難い。それにしても伊兵衛の商才はなかなかのもの」

 伊兵衛の名が出ると、仙太郎は居住まいを正す。

 「話のついでにまこと不躾ながら、殿にお許し頂きたき事がござります」

 藩主政宗が仙太郎の顔に目線を向ける。

 「嫡男源一郎の嫁に伊兵衛殿の娘を娶りたいと」

 「それは目出度い」

 「とは言え、伊兵衛殿は商家。ひとまず義弟喜多川の養女にしたうえでもらい受けたく」

 「あい分かった。わしも伊兵衛の功に報いねばと思っていた。二重のおめでたじゃのう」

 「有り難きお言葉。恐悦至極に存じます」

 仙太郎は深々と頭を下げた。
 話は済んだ。ようやく二人は碁盤に向う。
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