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お良の性春
第5章  波乱万丈 若後家 恋の旅立ち
 清兵衛の射るような視線に、上げた顔をはにかむようにうつむくお良。
 そのうつむいた顔が思わず綻ぶ。

 (本当だワァ)

 父の言葉通り、清兵衛は錦絵から飛び出したような細面の男前。
 役者のようないい男であった。

 「さあ、挨拶は済んだ。朝食にしましょう」

 お良が勧められるままに清兵衛と二人並んで席に着くと、台所から思わずため息が上がる。
 口をアングリ開けてお良を見ていた手代や丁稚、どんぐり眼でお良の姿を追っていた女中までもが、そのなんとも似合いな美男美女のカップルにたまげたのである。
 食事が始まると台所も茶の間も、また一斉に賑やかになる。

 「エレェ別嬪だ」
 「だれでぇ、信濃の山猿だなんて言った奴ぁ」
 「この広いお江戸にも、あれほどの色香のある女はそうは見つからねぇ」
 「それにあの身のこなし。さすがは武家の若後家だ」
 「裾から覗いて見えた足首も真っ白。やっぱり雪国の女は肌が白い」
 「大分腹が減ってたと見える。よく食うねえ」

 朝食どころではない。
 上座に座って食事を摂るお良の批評にうるさいの何の・・・。
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