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お良の性春
第5章  波乱万丈 若後家 恋の旅立ち
 その時、番頭の弥助が声をあげた。

 「若旦那、こんな綺麗な花嫁さんを前にしちゃぁ仕事にならない。今日はたいした荷も入りませんから、お二人でお江戸見物にでも」と気を利かす。

 「弥助、じゃあ、そうさせてもらいますよ」

 清兵衛の返事。

 「お良、明日の晩には親戚縁者を呼んで祝言。髪結いを頼んであるから、朝のうちにそれを済ませて、二人で美味しいものでも食べに行ってきな」
 「女将さん、何から何までのお心配り、ありがとうございます」
 「お良さん、しばらくは右も左も分からないから、お袋に任せておけば安心です」

 清兵衛の優しい声が続いた。

 (男前だし、その上優しいワ)
 
 その日の昼過ぎ、あら方仕事が片付くと清兵衛はお良を連れて店を出た。
 田舎育ちの嫁のためにと、お春は江戸で流行の着物まで用意してくれた。
 結い直したお良の髪には、出掛けにお春が刺してくれた簪(かんざし)がキラキラと輝いていた。 

 簪の先には飾りの蝶が揺れて、表に出たお良は蝶になって舞うような心持ちであった。
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