この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
「大丈夫やったか?澄佳」
店に戻ると祖母が不安そうに尋ねてきた。
「…うん。大丈夫…。
でも、なんだか変なひとだね」
手のひらに握りしめられた一万円札と名刺を見つめる。

…片岡リゾートカンパニー…代表取締役…片岡直人…。

「おばあちゃん、代表取締役…てどういう意味?」
今年、調理師学校を卒業したばかりの澄佳は世事に疎い。
就活せずに卒業後は祖母の店を手伝っているから、一般企業の役職の名称にも詳しくない。
「社長さんてことや。
昨年、若旦那のお父さんが引退してあのひとが跡を継ぎんさったんやよ。
まだ三十やそこらなのに遣り手さんらしいわ」
「ふうん…」
「先代の片岡さんはこの辺の出身のひとやけど、若旦那はずっと東京で育って大学も外国らしいわ。
アメリカだかどこか、詳しゅうは分からんけど経営学勉強して北海道のおおきなリゾートホテルの副支配人にまでなったところで帰ってきたらしいよ」
「…ふうん…」
名刺は厚手で上質なもので、裏面には澄佳には読めない英語でさまざまな役職が書いてあるようだった。
…外国の大学か…。だからあんな見たことないような煙草を持っていたのかな…。

「…けどねえ…」
祖母が遠慮勝ちに口を開く。
「あの若旦那にはあんまり良い噂は聞かん。
…先代はこの辺りの昔ながらの風景や素朴さがいいちゅうて開発には消極的やったけど、あの若旦那は積極的にリゾート開発しようちゅうて東京のいろんな投資会社のひと連れて来よるちゅう話や。
…まあ、この辺はリゾートにするような旨味もないやろうから…そんなに心配はいらんやろうけどね。
…けど…女性関係も派手な社長らしいから…澄佳、気をつけるんよ」

祖母はこんな田舎町には不似合いなほどに美貌の孫娘が気掛かりでならなかった。
大人しく物静かな性格なのに、高校や専門学校でも澄佳に恋するものは後を絶たず…本人が断るのに苦労をしたようだ。
…幼馴染の涼太が用心棒のように目を光らせ追い払ってくれなかったら、澄佳が無事だったかどうかわからない…。
決して派手でも華やかでもないのに、見るものを惹きつけ夢中にさせてしまう…。
そんな謎めいた魅力がこの孫娘にはあるようなのだ。

祖母の密かな心配を露知らず澄佳は無邪気に笑ってみせた。
「大丈夫だよ、おばあちゃん。
あのひとは田舎の定食屋がちょっと珍しかっただけよ。
もう来ないよ、きっと」
/332ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ