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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
…けれど片岡はそれからほぼ毎日、澄佳の食堂を訪れるようになった。
最初は昼営業だけだったが、時には夜の営業時間にも足を運ぶようになった。
来てもビールと料理を頼み、小一時間ほど滞在してさっと帰るだけなので、祖母も余り警戒しなくなってきた。
…何より片岡はこの辺りに影響を持つ実業家だ。
何もしていないのに、出入りするなとは言えない。
…ただ一人、涼太だけは警戒心を緩めようとはしなかったが…。

「今夜のお勧めは?」
いつものようにやや尊大な様子でテーブルに着くと、片岡はそう尋ねるのが常になっていた。
つまり、澄佳が創る料理を食べるためらしかった。
「…今日はナシゴレンです」
澄佳はビールとお通しを置きながら答える。
「へえ…ナシゴレンね。
ここは和食の店だろう?珍しいね」
冷ややかな眼差しが興味を持ったように少し柔らかくなる。
「…本当はそうなんですけど…祖母が私の料理も少しずつ出して見れば…?て言ってくれて…。
エスニック料理をメニューに加えてみたくて…初めて出すんです…」
はにかんだように言う貌をじっと見て、片岡は微笑った。
「…じゃあそれを…。
楽しみだ…」
…このひとは、笑うと別人みたいに優しくなる…。
そして、その笑顔がなぜだか嫌いではない。
澄佳は少しどきどきしながら厨房に戻った。


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