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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
ナシゴレンを片岡は綺麗に食べた。
やや傲慢な態度が目立つ片岡だが、食事のマナーは良い。
特に箸遣いはとても綺麗で、やはり育ちが良いひとなのだな…と澄佳は密かに感心していた。

片岡が立ち上がったのを見て、レジに向かう。
レジ前で片岡はさり気なく口を開いた。
「…美味しかったよ」
酷薄そうな口元には優しげな笑みが浮かんでいた。
「…良かった…。ありがとうございます」
ほっとして思わず笑い返す澄佳を、片岡はやや眩しげに見つめた。
「…本格的なスパイスや生ハーブをもっと使えば、更に味に深みが増すだろうな」
意外に的確なアドバイスに驚きつつも、肩を落とす。
「…そうですよね。
…ここだとなかなかスパイスが揃わなくて…。
パクチーやコリアンダーも売ってないし…」
…東京に行けば食材やスパイスは簡単に手に入るのだろうが、こんな田舎の海の町だとなかなかだ。
大きな街に買いに行く時間もない。

「明日は休業日だろう?」
「…はい…」
「木更津に美味いエスニック料理の店がある。
君の料理の参考になるはずだ。
一緒に行こう」
唐突な誘い文句。
…しかも高飛車だ。
何を考えているのだろうか。
澄佳は眉を顰めた。
「行きません」
「なぜ?」
「…なぜ…て…。
…だって…貴方と一緒にお食事に行く意味が分かりません」
「俺は君をデートに誘っているだけだ」
「デ、デート⁈」
思わず大きな声が出た。
祖母が心配そうに、厨房から覗いている。
「デートくらいしたこと、あるだろう?」
澄佳は首を振った。
「ないです」
片岡が不審そうに眉を寄せた。
「…今まで男と付き合ったことは?」
「…ないです…けど…な、なぜ貴方にそんなこと話さなきゃならないんですか⁈」
むっとしてそっぽを向く。
片岡が可笑しそうに笑いながら紙幣を置き、澄佳の薄桜色の耳朶に囁いた。
「…明日、11時に駅前のロータリーで待っている」
はっと振り向いた時には男の姿はなかった。
澄佳は店の外に駆け出し、叫んだ。
「行きません!」

いつものように駐車場に停めていたセンチュリーに乗り込んだ男は愉快そうに笑うだけで返事もしなかった。
運転手が車を出し、黒塗りの車はあっと言う間に視野から消えた。

「…行くわけないわ…あんな…失礼なひとと…」
夜の潮騒はごうごうと音を立て、澄佳の心を騒めかせた…。


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