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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
その夜はよく眠れないままに朝を迎えた。
…行くわけない…。
あんなひとと…デートだなんて…。
偉そうで冷たそうで…おばあちゃんもよく思ってないみたいだし…。

澄佳はいつも通りに祖母と朝食を摂り、洗濯と掃除を済ませた。
…部屋の時計がやたらに気になる。

…10時半…。

…行くわけない…。

…「…11時に駅前のロータリーで待っている…」

あっちが勝手に言っただけだもの…。
…知らない。

澄佳の料理はいつも綺麗に食べてくれていた…。
澄佳が笑うといつも少し眩しげな表情をする…。

…あんなひと…。

…10時40分…。

階段を駆け上がり、部屋に入る。
小さな洋服箪笥を開ける。
…滅多に出かけたりしないから、洒落た外出着などほとんど持っていない。
手持ちのワードローブで一番気に入っているワンピースを取り出した。
サーモンピンクのふんわりとした袖に長いスカート。
鏡台の前に座ると丁寧に髪を梳かし、口紅だけ塗った。
…口紅は、今年の誕生日祝いに祖母がプレゼントしてくれたものだ。
なんだか貌周りが寂しかったので、最近始めたハンドメイドのイヤリングを付けた。
ミルキーピンクのチェコビーズだ。
ティアドロップ型が可愛らしくて気に入っていた。
友だちにあげようかな…と取っておいたものだ。
…あの男のためにおしゃれをしているのかと思うと、なんだか腹立たしい…。
けれど、支度の手が止まらない。

ベージュの小さなポシェット型のショルダーバッグを持ち、そっと階段を降りる。
祖母に見つからないように玄関で靴を履く。
…ルビー色の革の中ヒールは、卒業記念にバイト代を貯めて買ったものだ。
勿体ないのと、おしゃれなヒールを履いて出かける機会もなくて新品のままだった。

玄関を出ようとすると、背後から遠慮勝ちな声が掛かった。
「…澄佳、出かけるんかい?」
「…うん。ちょっと…街まで買い物に行ってくるね…。
そんなに遅くならないから…」
なぜだか祖母の貌は見られなかった。
「…行ってらっしゃい。
…気をつけるんよ…」
祖母の声に送られて、家を出た。

…心臓が、どきどきと煩いくらいに音を立てていた。





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