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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
駅前のロータリーに、男はいた。
…メタリックシルバーのクーペのベンツ…。
車体にもたれかかる様に煙草を吸っていた。
…片岡はいつも見慣れたスーツ姿ではなく、洒落たデザインのジャケットに黒いカシミアのセーター、ダークグレーのスラックスと言う洗練された服装だった。
すらりと背が高い男にはそのやや砕けたおしゃれな服が良く似合っていた。
大人のおしゃれな男を初めて見る澄佳は思わず見惚れてしまう。

…澄佳を見つけると、片岡はその冷ややかな瞳を眩しそうに細めた。
行ったものの…なぜ来てしまったのだろうと言う想いも渦巻き、思わず立ち竦む澄佳に片岡はゆっくりと近づいて来た。

「…可愛くて驚いた」
…自分が来て当然と思っていたのだろうかと、少しむっとして貌を上げると、優しい眼差しにぶつかる。
「…私、デートのつもりで来たわけじゃないです…。
本格的なエスニック料理を食べてみたかったから…」
男が可笑しそうに笑った。
…このひとの笑い方は嫌な感じがしないから、困る。
「もちろん、それでいい。
…来てくれて嬉しいよ。澄佳。
…さあ、乗って」
迷いのない動作で軽く肩を抱かれる。
…男の温かな体温を感じる。
初めて触れる大人の男の温もりに、きゅっと身を縮めてしまう。
そんな澄佳を振り返り、片岡は甘やかすように微笑んだ。
「…君は本当に可愛いな、澄佳…」





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