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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
久里浜へ向かうフェリーの甲板から、澄佳は大海原を見つめていた。
…片岡は一等客室で、どこかに電話をかけていた。
そっと彼から離れ、甲板に上がって来たのだ。

眼の前に広がるのは、夜の暗く…底知れぬ深い深い漆黒の海だ。
甲板の手摺りから身を乗り出し、船首を覗き込む。
白いレースのような縮れた波が打ち寄せ砕ける様を飽きずに見つめる。
潮の香りは、澄佳が知る内房の海岸のそれとは僅かに違った。
打ち寄せる波の音や、耳元で騒ぐ潮風は激しく、澄佳の胸を一層、泡立たせた。

「…何を見ているの?」
背後から落ち着いた男の低い声が響き、同時に温かな逞しい腕に包まれた。
「…夜の海を見ていました。
私、フェリーに乗るの、初めてなんです」
「へえ…。そう…」
…風に遊ばれる澄佳の髪を優しく撫でる。
「…久里浜まで40分、あっと言う間だ」
「そんなに早く?
…私、向こう側へは簡単には渡れないものだと思っていました」
男が低く笑う。
抱き寄せられ、髪に口づけされる。
「…たまにお天気が良いと三浦海岸がうっすら見えるんです。
…でも…東京湾は遠くて…すぐには行けない場所だ…て信じ込んでいました」
…あの海の小さな町で生きて行くのが当たり前だと思っていた…。
…今までは…。

「…電話して。澄佳」
スマートフォンを差し出される。
「…え…?」
片岡がひんやりとした端正な貌で繰り返す。
「君のお祖母さんに電話して。
俺と暮らすことになったから…て。
電話しなさい」
有無を言わさぬ口調に、身を硬くする。
片岡は澄佳の手を取り、スマートフォンを握らせる。
「俺と一緒にいたいなら、掛けなさい。
自分の口で言うんだ」
夜の海より冷たい瞳が、澄佳を見据える。
…けれどその中に、自分を乞う滾る熱情を痛いほどに感じ取る。
だから、拒めない。
澄佳は、胸を喘がせながら呼吸を整える。
震える指が、画面のキーを押す。




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