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フリマアプリの恋人
第1章 prologue
本郷にある古い実家の門前に車を付け、ゆっくりとギアをパーキングに戻す。
久々に実家の高い門扉を見上げる。

…大正初期に作られた和洋折衷のモダン建築の薫り漂う広大な屋敷は、父親の曽祖父が建てたものだ。
旧帝大の医学博士だった曽祖父は新薬を開発し、その特許料が未だに入る。
また、代々その製薬会社の株も多く所有していることから、株の配当も潤沢にあった。
柊司の父親が不慮の事故で亡くなっても生活に窮しなかったのは、この為であった。

しかし由貴子は若い頃から続けていた茶道の師範の資格を活かし、離れの茶室で茶道教室を開いていた。
「私がきちんと仕事をしている姿を瑠璃子に見せたいの」
そう毅然として語った由貴子を、柊司は改めて美しく気高いと感じ入ったものだ。


「着きましたよ、母様。
…春さんはもう帰ったのかな?」
門柱には柔らかな灯りが灯ってはいるが、中から迎えに出てくる家政婦の気配がない。
「春さんは今日はお昼までなの。
…最近、腰が痛いらしくて、少しでも休んで貰おうと思ってね」
春は柊司が幼い頃からこの家で働いている家政婦だ。
元気で明るく働き者だが、そろそろ七十近い年齢な筈だ。
「そうか…。春さんも大分歳をとったんだね」
「でも相変わらずお元気よ。てきぱきしていて私よりしっかりしていて助かるわ」
由貴子と眼を合わせて笑い合う。

…そのままドアを開け掛け
「…上がってご一緒に夕食を召し上がって行かれない?
今日は春さんがちらし寿司を作っていたわ。
柊司さん、春さんのちらし寿司、お好きでしょう?」
由貴子が無邪気に誘った。
一瞬の間ののち、柊司は柔らかく断った。
「春さんのちらし寿司は魅力的だけど、今夜は友人と飲みに行く約束をしているんです」
「そう…じゃあ、少し待っていてね…」
由貴子は落胆することなく、そう声を掛けると車外に消えた。
…甘く切ない花の薫りが、車内に残った。
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