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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
悪い夢を見ているような感情に支配され、澄佳は現実を受け止めることができなかった。

…しかしテーブルの人々の会話は、否応なしに続けられた。

「まあ!なんて寛大なのかしら!
…ちょっと貴方聞いた?
貴方も少しは直人さんを見習ってよ。
このひとときたら、私がちょっとでも一人で遊びに行こうものなら、どこに行くんだ?誰に会うんだ?て煩くてしょうがないんだから」
友人の女の他愛のない愚痴に傍らの男が苦笑いを漏らす。
「…ま、まあね…。そりゃ夫婦なら当然じゃないですか?奥さんの行動は気になりますよ…。
片岡さんは大人ですねえ…」

「…私に無関心なだけじゃない?」
冷めた笑いが聞こえたのち、片岡が切り出した。
「…そろそろパーティが始まる時間ですよ」
友人の女が慌ただしく立ち上がる。
「あら、いけない。そろそろ上に行きましょう。
…でも遥香もイブに結婚式なんて…ロマンチストよね」
「ロマンチストじゃなくてKYだわ。
…パリに行くつもりだったのに、はっきり言って迷惑」
うんざりしたような声…。
「…相変わらず皮肉屋ねえ…」
友人の呆れたような声と共に、四人がテーブルを去る気配が伝わる。

…恐る恐る振り返る。

片岡が堂々たる長躯の後ろ姿を見せながら、妻をエスコートしながらラウンジを去ろうとしていた。

思わず立ち上がり、片岡に一歩踏み出す。

…その瞬間、澄佳の震えるか細い腕を、強い力で引き戻す者がいた。
振り返る澄佳の眼に飛び込んで来たのは、宮緒の見たこともないほどに真剣な表情だった。



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