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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
…受診を終え、二人でクリニックを出る。
澄佳はほっとため息を吐いた。
傍らの背の高い美しい男を見上げる。

…宮緒は婦人科の待合室の片隅で静かに待ってくれていた。
クリスマスの待合室は空いていて、その中で容姿端麗な宮緒の姿はとても目立った。

…しかし婦人科には夫が同伴する場合も多いらしく、不審な眼で見るものはいなかった。

…どう見られていたのかしら…。
もしかして、夫婦…?
…そんな人生もあり得たのかも知れない…。

甘く切ない感傷が過る。
…馬鹿ね…私ったら…。


宮緒が気遣うように澄佳を見下ろし、微笑った。
「…もう大丈夫ですよ」
…女性医師によると受診が早かったので、避妊率は99%の確率ということだった。

澄佳は黙って頷き…涙ぐむ。
「…ありがとうございます…」

宮緒が柔らかく笑い…静かに告げる。
「…マンションまで送ります」
澄佳の表情が曇る。
ぽつりと呟く。
「…まだ…帰りたくありません…」
…今、片岡と貌を合わせたら…何を口走るか分からない…。
愛しているのに…あのひとが理解できない…。
…この感情をぶつけてしまうかも知れない。

そんな澄佳をじっと見つめ、宮緒は優しい声で告げた。
「…では、どこかに行きましょう。
どこか、行きたいところはないですか?
どこにでも、お連れします」
「…え?」
意外そうに見上げる先に、少し悪戯めいた笑みを浮かべた…けれど誠実で真っ直ぐな眼差しがあった。

「…今日だけ…1日だけ、僕の恋人になってください」








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