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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
三浦海岸の海岸道路に、宮緒は車を停めた。
「…海の匂いだわ…!」
澄佳は嬉しそうな笑顔でドアを開け、外に出た。

冬の午後の三浦海岸は眩しいほどの光に包まれ、その紺碧の水平線はきらきらと輝いていた。
待ちきれないように白い砂浜に走り出す澄佳を、宮緒は微笑んで見守った。
「早く!宮緒さんも早く来て!」
まるで子どものような笑顔で振り返り、手招きする。
澄佳の元に近づき、手を差し伸べる。

…澄佳は恥ずかしそうに笑っておずおずと男の手を握り締めた。
温かな…大きな手…。
澄佳を愛おしむように…守るように包み込む。

…今日だけ…今だけの恋人…。

二人並んで穏やかなクリスマスの海岸を歩く。
「…澄佳さんは海を見ると表情が違いますね」
さっきまで、生気がなかった瞳はきらきらと輝き、白蠟のようだった頬は薔薇色に染まっている。
「…生まれた時からずっと海のそばで暮らしていました…。
波の音は子守唄代わりなんです…。
…東京に来てから…海を見ることもなくて…。
…忘れていました。
…この匂い…この潮風…」
…懐かしい…と、目を閉じて、胸いっぱいに吸い込む。
冷たい潮風が、澄佳の頬を優しく撫でる。

「…僕も内房のあの海の町に生まれたんですよ」
宮緒の言葉に驚いて彼を見上げる。
「…え…?」

「…僕の母は社長の父親…会長のお妾さんでしたからね。
母の実家は小さな網元の家だったんです。
小学生まではあの海の小さな町に暮らしていました。
…会長の奥様は東京にお住まいでしたし…母子二人のどかに暮らしていました。
…会長は豪快で優しいひとです。
愛人の子どもの僕をきちんと認知して愛情や教育も惜しみなく与えてくれました。
中学に上がると横浜の全寮制の学校に入学しました。
…何不自由ない生活でした。
…けれど…寂しかった。
…書類に父親の名前を書くことはなかったし、母親は人目を避けるように暮らしていました。
家のことも友達には内緒でした。
…義兄に会ったのはそんな頃でした。
義兄は屈託無く僕に話しかけてくれました。
…一人っ子だったから弟が出来て嬉しい…と。
そして、いつか俺の力になってくれ…と。
…嬉しかった…」
宮緒の眼鏡越しの端正な瞳が海を見つめる。
…この水平線の先の房総半島に想いを馳せるかのように…。
…たまらなく切ない感情が満ち溢れ、その手を強く握り締める。







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