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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
冬の日没はあっと言う間だ。
茜色の空はやがてラベンダー色から藍色にとその色を変えた。
…もうすぐ一番星が輝く。
帰らなくては…。

…二人は砂浜に座り、肩を寄せ合ったまま動かなかった。
「…もう…帰らなきゃ…」
小さな声で澄佳が囁く。
「…帰したくない…」
宮緒が万感の思いが詰まったように答えた。
肩が抱き寄せられ、見つめられる。
「…もし僕がすべてを捨てると言ったら?
貴女はどうしますか?」
「…宮緒さん…」
澄佳の濃く長い睫毛が切なげに瞬かれる。
「…あの海の向こう…すぐそこに僕たちのふるさとがある」
…宮緒の美しい手が海を指差す。
澄佳は目を凝らす。
そう…。
房総半島の…あの小さな海の町はすぐそこにあるのだ。

「…ここから久里浜に行って、フェリーに乗りましょう。
40分で房総半島です。
…そこで一緒に暮らしてくださいと…僕が言ったら?」

…夢のような言葉だった。
あの海の町で、宮緒と暮らす…。
…何もかも、やり直せる…。
…片岡の枷から解き放たれて…自由に生きられる…。

宮緒の手が澄佳に差し伸べられていた。

…この手を取れば…私は自由になれる…。
この手を取るだけでいいのだ…。

…でも…。

目の前の清らかで美しい男を見つめる。
…宮緒にとって澄佳と生きることはすべてを捨てるだけではない。
義兄を裏切り、何もかも無くすことを意味するのだ。

…それに…。
澄佳の脳裏に、片岡の面影が浮かんだ。

…あのひとを、私はまだ愛している。
狡くて傲慢で私を執愛という束縛の檻に閉じ込めようとするあのひと…。
…傲慢で冷ややかで…けれどどこか寂しい色を纏った男…。
それを知ってしまったから…私は離れられないのだ…。

…取られない手が、ゆっくりと下りる。
宮緒は何もかも悟ったかのように、静かに口を開いた。
「…すみません。…貴女を困らせてしまいました…」
白い頬に涙を滴らせ、首を振る。
「…ありがとう、宮緒さん。
私、忘れません。…今日のことを…一生忘れないわ…。
貴方との美しい想い出を…一生…」
…すべての情熱を込めた力で抱き竦められ、唇が奪われる。
お互いのすべてを確かめるような激しい口づけに、想いを刻む。
「…忘れないわ…貴方を…ずっと…」
見つめ合い、その唇を指でなぞる。
「…澄佳…」

…やがて二人の姿は闇に溶け、海鳴りだけがあとには残ったのだ…。

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