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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
「…片岡さんが…?」
初めて澄佳から反応を得た莉紗は、嬉しそうにほくそ笑む。
腕組みしながら、澄佳の前に立った。
「ええそうよ。直人さんは私に言ったわ。
澄佳の気持ちが分からない。
あいつは俺のことを愛しているふりをしている。
従順に見えて、本当は俺を冷ややかな眼で見ている。
俺の子どもも積極的に欲しがらないし、その心を窺い知ることはできない。
…だからあいつの前だと心底落ち着けない。
息がつまる…て」

澄佳の長い睫毛が震え、その形の良い唇から血の気が引いた。
その様を莉紗は嬉しそうに見つめた。
尚も猫撫で声で続ける。
「…貴女を抱いていると、綺麗だけど冷たい人形を抱いている気持ちになるんですって…。
虚しくなるって言ってたわ。
可哀想な直人さん。
…私は明るくて甘えん坊で仔猫みたいに可愛い…て。
…ねえ、澄佳さん。
貴女もう直人さんに必要とされていないんじゃないの?
直人さんは義理堅いから、自分から言い出せないのよ。
彼から三下り半を突きつけられる前に、綺麗に身を引いたら?」

頭が割れるように痛い。
…片岡さんが…そんなことを…?
嘘だわ…。信じられない…。

澄佳の艶やかな髪に手を伸ばし、弄ぶ。
「…直人さんはきっと充分な手切れ金をくれるわ。
貴女ほどの美人なら、直ぐに良いパトロンが見つかるわよ」

「帰ってください…」
低く掠れた声で呟く。
莉紗は肩を竦め、最新のケリーバッグを腕に掛ける。
「…良く考えてみるのね。
貴女に一番得な生き方を…。
じゃ、さようなら。
…綺麗で不感症な第二夫人」

高笑いと共に、ドアが閉まる音が響いた。
澄佳は力なくソファに座り込んだ。


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