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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
「もう…行かれるのですか?
体調は大丈夫ですか?」
澄佳が歩み寄ると、宮緒は柔らかな微笑みで尋ねた。
「…ええ。もう大丈夫です。
…あの…宮緒さんは…?」
改まったいでたち、荷物を積んだ社用車…。
「僕も今日の午後に上海に発ちます。
…色々ありましたが、予定通りです」

…と、静かに労わるような口調で伝える。
「…麻季子さんは郊外の医療機関に入院されました。
澄佳さんの上申書のおかげで、書類送検だけで済んだと…麻季子さんのご両親は大変感謝されておられました」

澄佳は首を振る。
「…そんな…感謝だなんて…。
…私は真実を告げただけです…」
麻季子の弁護士と面会し、書面をしたためた。
麻季子への情状酌量を求める内容だ。
被害者である澄佳からの上申書と、麻季子自身の心神耗弱状態から事件は書類送検のみに留まった。

…麻季子に殺意を向けられたことを、澄佳は恨んではいなかった。
もしも、立場が違えば…自分も同じような行動に走っていたかもしれないからだ。

宮緒はスーツの内ポケットから一通の白い封筒を手渡した。
「…社長からです。
今、貴女に会いに行くわけにはいかないから…と、私に託されました」
片岡はまだ精神状態が安定しない麻季子に付き添っていると聞いた。

…麻季子の悲痛な叫びが蘇る。
…「好きだったのに!
ずっとあのひとが好きだったのに!」

…今、自分の傍らに片岡が寄り添っていることを、麻季子は気づいているのだろうか…。
…気づいて欲しい…と、澄佳は願った。

「…そう…」
手紙を受け取る澄佳を宮緒はじっと見つめる。
「…本当にすまなかったと、仰っておいででした…」
澄佳は黙って首を振った。
「…もう、いいの…」

弁護士から澄佳への巨額な慰謝料も提示された。
澄佳は直ぐに固辞した。

宮緒を見上げ、そっと微笑う。
「…もう、終わったの。何もかも…」
…激しくも甘く…そして苦い夏の名残りの恋は終わったのだ…。
この胸に残る愛の薔薇の棘は、まだ抜けないけれど…。
…この痛みとともに、生きてゆく決意を澄佳はしたのだ…。









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