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フリマアプリの恋人
第6章 チャイナローズの躊躇い 〜告白〜
車は次第に懐かしいふるさとへの道を辿り始めていた。
「…ったくよお…なんだよなあ…あいつはよお…」
涼太はハンドルを握りながら、まだぶつぶつと言っている。
「澄佳に気安くキスなんかすんじゃねえよ!
しかも往来でよ!厚かましいんだよ!あのやろう…」
澄佳は小さく笑った。
「宮緒さんはいいひとよ」

…ぶすっとした声が響く。
「…好きだったのか?あいつが…」
窓の外の景色に眼を移す。
…磯の香りが掠める。
海は近いようだ…。
車は海岸線へと進路を変えた。

「…うん。好きだった…」
…清潔で優しくて…眩しかった…。
温かな手で凍えそうな私の心をずっと暖めてくれたひと…。

小さな舌打ちが聞こえた。
「…あいつは?…片岡は?」
澄佳が握りしめたままの白い封筒を涼太はちらりと見る。
手のひらの中の白い封筒を見つめる。
「…大好きだったよ…。
愛していた…」
…冷たさも…狡さも…優しさも…すべて含めて愛していた…。

自嘲するように肩を竦めて笑う。
「…ごめんね、涼ちゃん。
凄いビッチみたいだね。私…」
すぐさま頭を小突かれた。
「下品な言葉、使うんじゃねえよ。
お前に似合わないだろ」

…前を向いたまま、怒ったように続ける。
「…お前はビッチなんかじゃない。
馬鹿みたいにお人好しで欲がなくて不器用で…綺麗な綺麗な澄佳のままだ」

…頬を温かく伝うのは涙なのかもしれない。
それを拭いもせずに助手席の窓を開ける。
「…ありがとう、涼ちゃん…」
手の中の片岡の手紙を丁寧に丁寧に千切る。
「…おい。…いいのか?」
「…うん。いいの…」

…内房の…穏やかな美しい海が見えてきた。
懐かしい…ふるさとの海だ…。

車は海岸道路をひた走る。

澄佳は窓から腕を伸ばし、そっと白い手のひらを広げる。
…片岡との恋に、密やかに決別するかのように…。

白い細かな紙片は、終わりゆく儚い色の夏空にふわりと舞い上がる。
…そうして、そのまま紺碧の海と空との間に煌めきながら溶け込み…やがて何も見えなくなった…。






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