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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
健斗が由貴子の肩を掴んだ。
その感触のあまりの華奢さにどきりとする。
夏の柔らかな瓶覗色の絽縮緬の着物…古典的な端麗で優美な貌立ち…、その一重の涼やかで切れ長の瞳は怒りと哀しみに潤んでいた。
「…お仕事柄精神分析はお得意のようね。先生。
…けれど人間はそんなに単純なものではありません。
好きか嫌いか…愛しているか愛してないか…自分でも分からないこともあります。
…そして、恋してはいけないと分かりつつも惹かれずにはいられないこともあるわ。
そんな気持ちを…捨て去ることができたらどんなに楽か…。
…その苦しさが…先生に分かる筈がないわ」
ぴしゃりと言い捨てて、健斗の手を逃れようともがく。
由貴子を柔らかく…しかし確実に腕に閉じ込める。
「分かりますよ。由貴子さん。
…だって俺は貴女をずっと見ていましたから…」
…嘘じゃない…。
大学時代、柊司に紹介され初めて由貴子を見た時から惹かれていた…。
義母だと紹介され、思わず言葉を失ったほどに由貴子は美しかった。
薫り立つような品格と優雅さを備えつつも儚げで…どこか危うい美しさと色香を秘めたこのひとに…。

「…貴女が柊司に惹かれ…そのことで苦しんでいるのも分かっていました。
…貴女も人一倍倫理観が強い方でしょうからね。
亡くなったご主人を裏切ること、血が繋がっていないとは言え、息子に恋すること…それらに葛藤し一人密かに悩む貴女は美しかった…」
震える肩を驚かさないように引き寄せる。
驚愕に見開かれる美しい黒い瞳に、やや粗野に…けれど真摯に語りかける。

「…俺にしなよ、由貴子さん。
俺なら貴女を受け止めることが出来る。
…そのままの貴女を…」
…由貴子の白い細面の貌が近くなる。
…なんて美しいひとなんだ…。
澄んだ黒い瞳が星のように瞬く…高貴な伽羅の薫り…

感動に打ち震える健斗の鳩尾に不意に激痛が走った。
「…痛っ…」
思わず呻く健斗を冷ややかに見下ろしながら、由貴子はしなやかに車を降りた。

「女をあまり舐めないことね、先生。
…セクハラで病院を訴えないのを幸いだとお思いになって。
では、ご機嫌よう」

夏絽の清しい後ろ姿を見せながら、由貴子はその場を毅然と後にした。

呆気に取られ…やがてにやりとする。
「…なんて気の強い女だ…!
どこが儚げな未亡人だよ」
愉しげな笑い声はいつまでも止まることはなかった。






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