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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
…その電話がかかってきたのは、柊司が金曜の午後の講義を終え、そのまま澄佳の住む内房の町に向かおうと準備をしていた最中であった。

「柊司さん?由貴子です。
お願いです。今すぐ来てくださらない?」
電話口の由貴子の声は今まで聞いたことがないほどに疲弊し、悲痛なものであった。
…これは只事ではないと柊司は表情を引き締め、尋ねた。
「どうしたんですか?何かあったんですか?母様?」

…電話口で由貴子が泣き崩れた。
「…今…瑠璃ちゃんが…瑠璃ちゃんが…隠していた睡眠導入剤を一気に呑んでしまって…。
…今、森先生が処置をして…付いてくださっているんだけれど…。
…あの子…死にたい…て…譫言ばかり言うの…。
…私…私…どうしたらいいか…」

あとは啜り泣く声だけであった。
…こんな…子どものように泣きじゃくる由貴子は初めてであった。
由貴子の動揺が手に取るように伝わってくる。

「分かりました。母様。今から病院に向かいます。
気をしっかり持っていらしてください。
すぐに行きますから」
そう告げると、柊司は車のキーを掴み慌ただしくマンションを後にした。
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