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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密

病室の外廊下の椅子に崩れ堕ちそうなほどの深い哀しみに暮れる由貴子が座り込んでいた。
柊司は駆け寄り、その肩を抱く。
「母様…!大丈夫ですか?」
ぼんやりした切れ長の美しい瞳が柊司を認め…やがて嗚咽を漏らしながらその胸に縋り付いた。
「柊司さん…!」
「瑠璃子は?瑠璃子の様子はどうなんですか?」
「…瑠璃ちゃん…瑠璃ちゃんが…」
柊司は、痙攣のように細かく震える由貴子を強く抱きしめた。
「落ち着いて、母様。大丈夫です。落ち着いて…」
手触りの良い柳色の紋絽の着物の背中をゆっくりと撫でる。
「…大丈夫です。泣かないで…母様…」
優しく繰り返し背中を撫で続ける。
少しずつ身体の強張りが柔らかく解けていく。
「…私…私がいけないの…。
瑠璃ちゃんの心の変化をまた見抜けなかった…。
前と同じだわ…。また…あの子を喪うところだった…。
…私…母親失格だわ…!」
自分を責め続ける由貴子が不憫で、思わずその身体を強く掻き抱く。
「母様のせいじゃない!それを言うなら僕にも責任があります」
…自分のことばかりにかまけて、大切な妹のことをなおざりにしていたのだ…。
もう大丈夫だろうと、安心しきっていた。
甘えがあったのだ。
…瑠璃子は陽気に笑いながら、実体のない不安と懸命に闘っていたのだ。
そして由貴子も…。
まだまだ不安なことも多かっただろうに…最近は実家に寄り由貴子の様子を見に行くことも少なくなってしまった。
澄佳との恋に夢中で…他のことが見えなくなっていたのだ。
…僕はなんて冷たい人間なのだろうか…。
自分の不甲斐なさに唇を噛み締める。
いや、せめて…せめて今からでもなすべきことをなさなくては…。
柊司はゆっくりと腕を解き、由貴子を見つめた。
「泣かないでください。母様。
…僕は瑠璃子が落ち着くまでずっと母様のそばにいます。
母様の力になりたいのです。何でも仰ってください」
「…柊司さん…」
由貴子の瞳から、水晶のように透明な涙が溢れ…白い頬を伝った。
…その時、病室のドアが開き、白衣姿の健斗が静かに現れた。
柊司は駆け寄り、その肩を抱く。
「母様…!大丈夫ですか?」
ぼんやりした切れ長の美しい瞳が柊司を認め…やがて嗚咽を漏らしながらその胸に縋り付いた。
「柊司さん…!」
「瑠璃子は?瑠璃子の様子はどうなんですか?」
「…瑠璃ちゃん…瑠璃ちゃんが…」
柊司は、痙攣のように細かく震える由貴子を強く抱きしめた。
「落ち着いて、母様。大丈夫です。落ち着いて…」
手触りの良い柳色の紋絽の着物の背中をゆっくりと撫でる。
「…大丈夫です。泣かないで…母様…」
優しく繰り返し背中を撫で続ける。
少しずつ身体の強張りが柔らかく解けていく。
「…私…私がいけないの…。
瑠璃ちゃんの心の変化をまた見抜けなかった…。
前と同じだわ…。また…あの子を喪うところだった…。
…私…母親失格だわ…!」
自分を責め続ける由貴子が不憫で、思わずその身体を強く掻き抱く。
「母様のせいじゃない!それを言うなら僕にも責任があります」
…自分のことばかりにかまけて、大切な妹のことをなおざりにしていたのだ…。
もう大丈夫だろうと、安心しきっていた。
甘えがあったのだ。
…瑠璃子は陽気に笑いながら、実体のない不安と懸命に闘っていたのだ。
そして由貴子も…。
まだまだ不安なことも多かっただろうに…最近は実家に寄り由貴子の様子を見に行くことも少なくなってしまった。
澄佳との恋に夢中で…他のことが見えなくなっていたのだ。
…僕はなんて冷たい人間なのだろうか…。
自分の不甲斐なさに唇を噛み締める。
いや、せめて…せめて今からでもなすべきことをなさなくては…。
柊司はゆっくりと腕を解き、由貴子を見つめた。
「泣かないでください。母様。
…僕は瑠璃子が落ち着くまでずっと母様のそばにいます。
母様の力になりたいのです。何でも仰ってください」
「…柊司さん…」
由貴子の瞳から、水晶のように透明な涙が溢れ…白い頬を伝った。
…その時、病室のドアが開き、白衣姿の健斗が静かに現れた。

