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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
午後から講義に行く柊司は、由貴子にいとまを告げようとその姿を探す。

…病棟内のランドリー室に由貴子はいた。
ちょうど乾燥機から、洗濯物を取り出しているところだった。
跪いた撫子色の夏の単衣の後ろ姿が夢のように美しい…。
けれどその華奢な背中はより一層、線が細くなったようだ。
痛々しさに胸が詰まりながら、敢えて明るく声をかける。

「母様…」
由貴子が振り返り、柊司を見上げる。
「…柊司さん」
白磁のような頬は削げ、明らかにやつれていた。
…けれどそのため、その美貌には凄味のようなものが増して息を呑むほどの美しさであった。
「僕はこれから午後の講義に出てきます。
夕方、またまいります」
由貴子は柔らかく微笑み、ゆっくりと立ち上がろうとする。
「…大丈夫よ。
今日はそのままお帰りになって…」

…立ち上がった刹那…由貴子の足元がふらつき、床に崩れ堕ちそうになった。
「母様!」
すかさず柊司がその身体を腕に抱き止めた。
力無く脱力した由貴子の身体は余りにも軽かった。
「母様!大丈夫ですか!?」
次の瞬間、意識を取り戻した由貴子は弱々しく返事をした。
「…大丈夫…少し…立ちくらみを起こしただけ…」
「貌色が真っ青だ。
少し休みましょう。健斗に言って部屋を用意して…」
「…いいの…大騒ぎしたくないの…。
少し休めば…治るから…」
しかしその貌は血の気が失せ、紙のように真っ白であった。
柊司が瑠璃子の病室に連れていこうとするのに、由貴子は頑として拒んだ。
「…だめ…。瑠璃ちゃんが心配するから…。
今のあの子に心配は掛けたくないの…」
「…母様…」

…しかしこのままと言う訳にはいかない。
由貴子は心底疲れ切っているはずだった。
瑠璃子が自殺未遂騒ぎを起こしてから家にも帰らず、恐らく夜も殆ど寝ていないのだ。
…このままでは、由貴子が倒れてしまう。

病院は本来、完全看護のシステムだ。
由貴子は無理を言って付き添わせて貰っていた。
だからこれ以上、病院に迷惑はかけられない…。
そう律儀な由貴子は思っているのだろう。

…柊司はひとつの決断を素早く下した。
「…母様、ひとまず僕のマンションに来てください。
そこでしばらく休んでください。
僕の家は本郷の家よりここに近い。
何かあったら、直ぐに駆けつけられますから」

…由貴子はゆっくりとその切れ長な瞳を開き…力無く頷いた。



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