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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
抱きかかえるようにして由貴子をマンションの部屋に入れる。
「大丈夫ですか?とりあえず、僕の寝室で休んでください」
由貴子は力無く首を振った。
「…だめ…。柊司さんの寝室に入るわけにはいかないわ…」
未だに蒼ざめた貌が弱々しく抗う。
「何を言っているんですか。こんな時に。
さあ、早く」
半ば強引に寝室に連れ込み、そっとベッドに腰掛けさせる。
「帯を緩めた方がいい。
…浴衣に着替えますか?」
由貴子の和装用スーツケースは瑠璃子の病室から持ってきた。
確か中に寝間着の浴衣が入っているはずだ。
スーツケースを開けて、白地に萩を染め抜いた浴衣と江戸紫色の帯を取り出す。
「これですか?手伝いましょうか?」
「…大丈夫よ…。自分でできます」
由貴子が恥じらうように襟元を白い指先で押さえた。
図らずも、その仕草に匂い立つような色香を感じる。
柊司はややどぎまぎしつつ、由貴子に背を向けた。
「分かりました。
それでは着替えて、ゆっくり寝んでください。
僕は大学に行きますが、講義が終わり次第戻ります。
何かあったら直ぐに連絡してください」
「…ええ…。
あの…。ありがとう…」
消え入りそうな由貴子の小さな声を背中に、柊司は寝室を後にした。





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