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フリマアプリの恋人
第7章 秋桜の秘密
「…貴方を愛しているの…。
誰にも渡さないわ」
滾る愛の告白ののち、由貴子の濃密な口づけが与えられる。
強く甘い酒のような酩酊感が柊司を襲う。
「母様…!だめです…!」
痺れるような快楽の眩暈の中、必死で振りほどき澄佳を追おうと立ち上がる。
澄佳が廊下を走り去る音がする。
「澄佳!」
駆け出す柊司の腰に、由貴子のか細い腕がしがみつく。
「行かないで…!柊司さん!お願い…行かないで…!」
…慎みも矜持も何もかもかなぐり捨てた…生のままの由貴子が縋り付く。
「母様…。離してください…!」
「母様じゃないわ!由貴子よ。
貴女に恋するただの女だわ…。
お願い…行かないで…!
澄佳さんのところに行かないで…!
軽蔑してもいい…嫌いになっても構わない…!
…でも…今は行かないで…。今だけでいいの…。
今は…ここにいて…お願いだから…一生のお願い…」
鳴咽を漏らし、由貴子は尚も柊司にしがみついた。
由貴子の熱い体温が柊司の腰に絡みつく。

…子どものように泣き崩れる由貴子を、柊司は振り解くことができなかった。
出来る筈がなかった。
自分も…このひとに何年も何年も言葉に表すことができないほどの切ない思慕の想いを抱き続けてきたのだから…。
柊司の脚が止まる。

…澄佳の小さな足音が遠ざかり…玄関のドアを開く音が聞こえ…それもすぐに静かに消え去った…。

…僕には、彼女を追う資格もないのだ…。

深い深い悲哀の中、柊司はそっと眼を閉じた。


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