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第8章 epilogue

一日の営業を終え、店の扉のプレートを外しに外に出た澄佳は、店の前の海岸道路の彼方に車のヘッドライトが瞬くのに気づいた。
次第に近づくライトに目を凝らし…自然に微笑みが生まれる。

…柊司さんだわ…。

待ちきれずに駐車場に降り立つ。
濃い藍色の闇の中、アウディが停まった。
ドアが開き、長身の男が現れる。
澄佳は小走りで男に近づき、抱きついた。
「お帰りなさい…！柊司さん！」
男の愛用するフレグランスが鼻先を掠める。
逞しく力強い腕が澄佳を抱き竦めた。
「ただいま。澄佳…」
耳元に心地よい低音のバリトンが響く。
「…会いたかった…。澄佳…」
逞しい胸元に子どものように甘えて埋める。
「…私も…会いたかったわ…。
週末が待ち遠しかった…」
ゆっくりと腕が解かれ、大きな温かい手が澄佳の貌を包み込む。
彫りの深い端正な眼差しが澄佳を見つめる。
…なんて…美しいひとなのだろう…。
澄佳は夢心地になる。
何度見ても慣れることができない。
胸が高鳴るほどに、目の前の男が好きで堪らない。
…恋しさ、愛しさは募るばかりだ。

「…愛しているよ。僕の可愛い奥さん…」
優しい微笑みのまま、澄佳の夫は妻の唇に甘いキスを与えたのだ。