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フリマアプリの恋人
第2章 鈴蘭のささやき
シャワーを浴び、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し一口飲んでいると、テーブルに置いたスマートフォンが点滅した。
ボタンを押して開く。
フリマアプリにメッセージが届いていた。
急いでメッセージを開封する。
…澄佳さんからだ…。

「清瀧様
無事にお届け出来て、安心しました。
バレッタは本当に私が最近作り始めたばかりの習作です。
まだお代をいただく品物ではないので、お気になさらずお納めください。
…もしよろしければ、妹様に感想を伺っていただいてよろしいでしょうか?
改良すべき点など、お聞かせいただけましたら私も勉強になりますので。
若い女性の率直なご意見を伺ってみたいのです。
どうぞよろしくお願いいたします。 澄佳」

柊司はほっとして、返信を打つ。
「ありがとうございます。
それではお言葉に甘えて、遠慮なく頂きます。
妹にも感想を聞いてまいります。
…実は…」
…少し迷いながら、返信を打ち続ける。
「中学二年生の妹は今、心の病の治療の為に入院しております。
澄佳様のイヤリングを拝見して、私にどうしても欲しいとねだったのですが、そんなことは初めてのことでした。
澄佳様の作られたアクセサリーの話をする妹は、生き生きとしてとても楽しそうなのです。
そんな妹を喜ばせたくて、私が代わりに買わせていただきました。(妹はスマートフォンを持つことを禁じられていますので…)
大変過保護な兄かと思いますが、これからもお世話になることと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 清瀧」

フリマの取引だけの相手から、こんな個人的な事情を聞かされても澄佳は困るのではないか…と一瞬頭を掠めたが、柊司は迷うことなく送信ボタンを押していた。
一か八かの気持ちでもあった。



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