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フリマアプリの恋人
第1章 prologue
…あれから、一年が経ったのだ…。

あの夜の由貴子の温もりと薫りは、今も容易に思い出せる…。
…けれど…。

「母様の分もありますよ。ミルクティーにしました。
…ショップの女の子に聞いたら、これがお勧めだって」

笑顔で流行りのドリンクを手渡す。
…胸の奥に、あの夜の出来事はしまい込む…。

「ありがとう、柊司さん。
…まあ、なんだかおしゃれな飲み物ね」
由貴子の白い手がそっとカップを受け取る。
触れ合いそうで触れ合わない距離で、二人の手は離れる。

「ママ、知らないの?ゴンチャ。
今、すっごく流行ってるタピオカのお店なんだよ。
ナースの美咲ちゃんなんか、表参道で一時間並んだってさ」
「まあ、それじゃあ柊司さんもわざわざ並んでくださったの?」
長い睫毛を瞬いて驚く由貴子に、明るく笑ってみせる。
「可愛い妹のためですからね。
…大学のすぐ近くにあるので、学生たちに冷やかされましたよ」
瑠璃子はちらりと柊司を見上げた。
「柊ちゃんはモテるんだよ、ママ。
毎日、女子大生が大勢研究室に来るんだって。
LINEも毎日ひっきりなしだって。
…ケンケンが羨ましがってたもん」
…ケンケンとは柊司の大学時代からの親友の森健斗だ。
この病院の精神科の医師で、瑠璃子の入院、治療に影になり日向になり尽力を尽くしてくれている。
陽気でおおらかで気の良い男だが、お喋りで何でもペラペラと話してしまうのが玉に瑕だ。
「あいつの話は適当だから、信じるんじゃないよ。
僕は普通に学生に指導しているだけだ」
…余計なことを言いやがって…と柊司は舌打ちしたい気分になる。

「瑠璃ちゃん、森先生とおっしゃい」
そっと窘めたあと、慈愛に満ちた微笑みで柊司を見た。
「そうなの。柊司さんは人気者なのね。
…柊司さんはとてもハンサムですものね。
若いお嬢さんたちは夢中になるでしょうね」
「ママ、それを言うならイケメンだよ。
ハンサムなんて死語だよ、死語」
「はいはい、イケメンね」
瑠璃子が生意気な口を聞いても、由貴子は嬉しそうだ。

…一年前の、あの辛い日々をまだ生々しく覚えているからこそ、瑠璃子のごく普通の生意気盛りな娘の口振りが堪らなくありがたいのだろう…。



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