この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
フリマアプリの恋人
第4章 芍薬の涙
ふと口を噤んだ澄佳をそっと思い遣るように、柊司が語りかけた。
「…そう。澄佳さんの周りには優しい方々がいらして良かったですね」
…温かな眼差しに、心が和む。
澄佳は素直に頷いた。

「…清瀧さんは?ご両親はご健在ですか?」
…妹のことは聞いていたが、他の家族のことはまだ何も知らない。

ギャルソンが慣れた手つきで柊司のグラスに白のモンラッシェを注ぐ。
澄佳はアルコール分のないシードルだ。
自分もアルコールはいいと言う柊司にワインを勧めたのは澄佳だ。
せっかくのフレンチなので柊司にはワインも楽しんで欲しかったのだ。

「僕の母は僕が幼い頃に亡くなりました。
…父は僕が大学院に上がる年に航空事故で他界しました」
自分と似たような境遇だったのだと、息を飲んだ。
けれどひとつ疑問が浮かんだ。
「…では妹さんとは…」
…十八歳も離れているのには訳があるはずだ。

柊司は穏やかに微笑みながら、グラスを取り上げた。
「父親は再婚したんです。
僕が十二歳の時でした。
瑠璃子は新しい母と父の間に生まれた妹です。
…だから可愛くて…入院している不憫さもあって、つい甘やかしてしまいます」
妹にねだられてフリマアプリに登録し、アクセサリーを買うくらいだ。
目の中に入れても痛くないほど可愛がっているのだろう。
澄佳は微笑ましく思った。

「お義母様はどんな方なんですか?
妹さんが入院中なら、お一人暮らし?」

…不思議な一瞬の間ののち、柊司は柔らかく微笑って答えた。
「…ええ、実家で一人暮らしです。
茶道教室を開いているので、忙しくしているようですよ。
…義母は…美しくて優しいひとです。
物静かで…でも芯はとても強い…。
…そんな義母です」
今まで聞いたことがないような複雑な色と感情が混ざったような言葉…。
…なぜだか胸が少し痛んだ。

柊司が視線を部屋の奥に遣り、朗らかに告げた。
「前菜が来たようですよ。…楽しみだ」





/332ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ