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夢見の国
第2章 甘美な冷遇
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そのまま引きずる様にして、奥の部屋へと連れ込もうとするラーストを、ゼイルは慌てて止めに入った。


「ゼイル、ルイザ様が力を失いそうになった日の事を覚えているか」

「……っ」


行き先を阻もうとしたゼイルが、ピクリと反応して動かなくなった。

美しい目元に苦渋の表情が浮かび上がる。

その凄まじい形相に、あたしは締め上げられている自分の腕の痛みを、一瞬忘れていた。


「わ…すれるはずがないでしょう」


絞るような声は、ゼイルの今までの印章を覆した。

上品に振る舞っていただけなのか、それともその過去が余程の事だったのか。

また暢気に観察し始めていたあたしは、より強くラーストに腕を掴まれ、小さく声を上げた。


「ぁっ!」

「もう二度とあのような想いはさせぬ」

「ラースト様、しかし…」

「まだ何かあるのか」


険しい瞳で見返されても、ゼイルは引き下がらない。

そんな二人を、意外な思いで見上げた。


(主従関係だと思ったけど、実は仲がいい…?)



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