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夢見の国
第2章 甘美な冷遇
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蝋人形のような無表情のまま、ラーストが唇だけを笑いの形にした。


「今から何があっても勘違いするなよ。我が命、我が全ては巫女の物。全ては巫女がためだ」

「ラーストさん…?」


冷たい銀の瞳。

射るようにあたしを捕らえ、その一挙一動を一つも逃すまいとしている。


「答えろ。あそこでお前は何をしていた?」

「あそこ…?あそこって、さっき会った場所っ?」

「そうだ」


真っすぐにラーストが見つめる。

そんなラーストを、ただただ見上げるしかない。


「信じないかもしれないけど、あたしはこの世界の者ではないの」


すぅ、とラーストが目を細めた。

続けろ、と促す。

この雰囲気が嫌で、焦りからかあたしは早口で捲し立てた。


「夕べは、長風呂をしてから夜中にベッドに入った。目を閉じたら、急に視界が明るくなって、しばらくは眼が開けられなくなって…。そして、やっと目を開けたとき、目の前にはこの世界が広がってた。あたしの思い描いていたような理想の世界よ。この自然や人々…全て」


そこでラーストを見つめた。

変わらぬ無表情のラーストの瞳からは、何も読み取れない。


「あの木の下から見た街は美しくて…しばらく見とれていたら、あなたが来たの」

「……」


こっちをじっと見つめていたラーストが、苦しげに重たい息を吐き出した。

そして、


「本当に馬鹿な女だ」


胸に響く様な、低く冷たい声でそう言った。


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